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大春日和 [ハシビロコウ他動物]

上野へ行った。

すこぶる天気宜しく、気温も高く、コートなぞ着ておれぬ程の陽気であった。者共には恰好の天候である。まずは当然わがターノへの挨拶から始めるが、わがターノは留守番日であるため、自室の暖房ライトの下に座り込み、寝入っておった。多分この日は部屋より外の方が暖かいであろうから、順番の廻り合わせとはいえ、気の毒になる。しかし当のターノは、壁に向かって実にのんびりと寝ている。寝ぐせがすっかり倒れていることから、リラックスした状態であることが知れる。そのまま小脇に抱えて帰りたくなる姿である。その寝姿を堪能した後、嫁入り決定の祝辞を述べに、反対側のミリーを見舞う。ミリーはサーナ部屋にいたが、ミリーの留守番日は、サーナ部屋・アサンテ部屋・ミリー部屋間のドアは開け放たれており、ミリーはその間を自由に行き来出来るようにしてある。飼育員氏の工夫が見て取れる方策である。ミリーはのんびりと羽づくろいにいそしみ、心なしか外で見るより体も大きい。恐らくリラックスしているためと思われる。ミリーには、彼の地で是非幸福になって欲しきものである。さて後は外日の3羽を拝まんと、南へ移動しながらふと見ると、ハトゥーウェが常駐スポットのひとつである北側ブロック塀前に座り込み、こちらもまどろんでおった。ということは、フラミンゴ庭にはサーナとアサンテのみということで、さぞや元気に活動して.....と思いきや、余りの暖かさ故か、サーナは右手前スポット後ろに座り込んでのんびりと日向ぼっこである。この日もアサンテは、何故かサーナから半径3m以内に陣取っている.....何故だ。この2羽は、いつ見ても概ね半径3m以内に位置しており、写真を撮るとすれば2羽を一枚に収めるのは全く難しくない。これしか見たことがなければ、者共が接近を嫌うことは容易に理解されまい。今回は、サーナの座り込む2m先くらい奥の位置にアサンテは立っていたが、その内、何を思ったか南に向かって歩み出し、サーナの前を横切り、尚も歩を進める。どうも飛ばずに歩いて生垣に乗るつもりであるらしい。アサンテは以前も、「飛ばずに上る」にチャレンジしており、その時はさんざん頑張った挙句、翼を広げた状態で生垣にどへっとのめってしまい、「の、乗れない.....」という顔をしながら、しばらくその体勢で止まっていた。者共がトリであることを考えれば非常に奇妙な話だが、者共は、実に表情豊かである。話を戻して、しかしこの日のアサンテは違った。前回の教訓を生かしたか、羽を大きく広げバランスをとろうとするところまでは同じだが、そこからは、よたつきながらも見事に生垣に上ることを得たのである。しかし、その生垣は、例の右手前スポットよりやや左よりであって、枝葉の密集が十分ではなく、立ったはいいが足がずぶずぶと沈んでゆく。人間でいう足首くらいまでは沈んでいる。アサンテは中腰になってバランスをとりつつ、より安定した右手前スポットに移動せんと向きを変えるのだが、そこからはサーナをまともに見下ろすこととなるため、サーナが顔に警戒の色を浮かべてアサンテを見上げた。アサンテは気迫に負け、右手前スポットに達することを得ず、仕方なく向きを元に戻す。サーナは警戒を解き、またのんびりと人垣に視線を走らせたりしているが、アサンテの方は欲求不満となったか、突如大きく羽ばたき、人垣を仰天させるのであった。かなりやけくそ気味にばさばさばさばさやっていると、客からは「こわーい」「大きーい」などの合いの手が飛ぶ。考えてみれば、他の大型鳥でこのように客に向かってばさばさやってみせる者は思いつかぬ。同居のフラミンゴも、タンチョウやダチョウも、自分の立ち位置で羽をばたつかせることはあるが、客に向かっての意図的デモンストレーションとさえ思えるこのような動きは、動物園内では者共に特有とさえ言える。
さてひとしきり憂さ晴らしに興じたアサンテは、再び右手前スポット奪取に取り掛かり、よたつきながら向きを変えると、サーナが再び警戒の色を浮かべた。見るからに「あんたわかってるの?ここにはアタシがいるのヨ!」という顔である。それを意識してか、アサンテはなるべくサーナの顔を見ぬようにしつつ、じりじりと右手前スポットに寄せる。後一歩というところで、怖いもの見たさか、ついサーナを見てしまったアサンテは、サーナの抗議(要するに口をくわっと開けての威嚇)をまともに見てしまい、すごすごと引き下がった。思うに、どうもサーナの方が強いらしい。アサンテは、姉ちゃんにまとわりつく妹といった感じである。姉ちゃんは、ある程度までは知らぬフリをしているが、まとわりつかれる(といっても者共の場合その距離は2m)と、「ちょっとうるさいワヨ」とやられるといった様子である。見ていて実に面白い。ともかく、仕方なく左寄りに戻ったアサンテは、本日はムリと判断したか、また羽を大きく広げ、よたつきながら徒歩で地面に降りた。どうするつもりかと見ていると、どんどん奥に向かって歩き出し、その内いつもの葉のとがった南国樹木の根元まで行ってしまった。ここはアサンテのお気に入りスポットなのであろうか、この根元で枝葉と闘っている模様を、そのスジの方のサイトで何度か見た。しかし実は、この木の後ろの竹垣が近頃ハトゥーウェの出入り口になっているせいか、そこから先にはどうしても進めぬ。じりじりと近寄り、様子をうかがいはするのだが、出入り口に達せんとした位置で、ぴたりと止まる。しかもそれが、もろに歩いている途中の格好でぴたりと止まるので、まるで後ろから引きとめられているが如き姿である。アサンテの脳内では、かなりの葛藤が起こっていることは間違いない。この模様は、右サイドの木で覆われた側面から覗き見をした訳だが、覗きながら笑いが止まらず困った。どう頑張ってもそれ以上進みそうにないが、ハトゥーウェがこのアサンテの挙動に気付いて行動を起こしはせぬかと気になったので、反対側に回り、確認する。ハトゥーウェは相変わらず、北側ブロック塀前に座り込んだままであり、あまつさえあくびまでしておった。既にハトゥーウェの座り位置は陽光も翳っているのだが、ひまわりのように陽だまりを移動するハトゥーウェにしては珍しく、動く様子がない。わが身はこの日、幸運にも一時間滞在する事が出来たが、この日遂にハトゥーウェの足を見る事はなかった。アサンテは相変わらず引き止められ体勢で止まっており、サーナは陽だまりで座り込み、均衡の崩れぬまま時間切れとなった。最後にわがターノに挨拶に行くと、幸運にも首だけで振り返ったので、明日、外での逢引を一方的に約し、上野を後にした。


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