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国立動物園を考えると [ハシビロコウ他動物]

「国立動物園を考える会」主催の第9回シンポジウム「動物園動物の福祉 Part2」(2017/6/24開催)に行ってみた。

行く気になった理由はただひとつ、TWだったかFBだったかで情報を見た折、

はあ? なんで国立動物園?

と思うたからである。
実際のシンポジウムは、国立動物園の是非等ではなく、タイトル通り動物園動物の福祉について、であったのだが、脳内にてどうにも?が乱舞するゆえ、ここで一応書き留めておこうと思う。

 
わが脳内を総括する一語としては、

百年早い

であった。

日本の動物園は、福祉云々以前にきちんとした飼育自体されていないところが多い。激狭小な上、その動物が住むに著しく不適正な住居・放飼場、適正でない食事、新鮮でない水(すらない場合も)など、枚挙に暇なき状況である。西洋世界で動物福祉に対する関心が顕著に潮流となっている現在、上記の要素は「福祉」以前の最低ラインであるが、われが客として見ている日本のメインストリームの動物園(まあ要するに上野多摩だな)ですら、その最低ラインがクリア出来ているかは甚だ怪しい。

成島氏の講演における「西洋(一神教)対東洋(多神教)のセンスの違い」「西洋のまんま輸入でなく日本流の福祉の発信が必要」思想には、わが脳内はほぼ絶句したり。氏は質疑応答の時間の補足で、「山川草木悉皆成仏」を引用したのだが、これを以て東洋的/日本的福祉を説くに至ってはわが脳内はいよいよ?の大乱舞である。
なぜ?なのか。
現代日本人でそんな事が体に染みついている者は圧倒少数だからである。そんな事が体現されている世であれば、あれ程の犬猫殺処分は起こらぬのであって(悉皆成仏の考え方が圧倒多数なのであれば、ペットショップからポンと飼って邪魔だからポンと捨てるような真似は誰もせぬであろう)、現代日本の動物に対する基本的な考え方は、「たかが動物」である。動物福祉や動物の権利を標榜する団体の圧力が、西洋から見れば考えられない程低いのも、そのためであろう。現代日本の動物観には動物の尊厳は殆ど存在せぬ。そして福祉以前の基本的飼育条件すら満たさぬ日本の大多数の動物園がそんな思想を持ち合わせていない事は全く明らかであって、そうした動物園が無意識に来園者に発するメッセージは、以前記した事の繰り返しになるが、「動物はこの様にヒトが悪条件でも飼って見世物にして良い、ヒトの楽しみのために存在するものである」に他ならぬ。それをどの口がぬけぬけと「山川草木悉皆成仏」と言ってのけるのか、正に?なのであった。
この「日本型福祉」の話は、
デンマークのマリウス事件/某西洋園のシロサイ安楽死
と 
井の頭はな子/とべピース/釧路タイガ・ココア/のんほいマーラ/のいちミルキー

事例の比較を例に出てきたものである。つまり、血統上要らぬから殺処分するか、不治の病に苦しむから安楽死させるか、繁殖には何の役にも立たぬが生まれて来たものであるから出来る限り生かすか、という事で、前者を西洋的福祉、後者を日本的福祉の例として出したわけである。
だが実際、マリウス殺処分は飼育スペース以外の動物福祉とは関係ないし、一神教思想から出たものでもない。現に、EAZAはデンマークのこの行ないを支持する声明を出しているが、AZAは非難している(実際、EAZAは子作りにはかなりぞんざいな印象があり、例えばゴリラは、米国ならバースコントロールするところ、産ませて男だったら去勢したりしている)。そうした二項対立は、一見説得力があるのだが、実際には複雑な要因を全て飛び越えた物事の単純化であって、思考停止に極めて近い。
日本の動物園が殺処分をしないのは、東洋思想の慈悲の心からではない。非難されたくないから、責任を取りたくないからである。現に、生まれたはいいが育って邪魔になると、密かに動物商に出されたりしている。ゴルフ場で溺死したシマウマが誰であったか分かって衝撃を受けた動物園ファンは多かったろう。何やらの動物フェアで、動物園由来を堂々と謳われたカワウソが複数販売されているのが判明した事も拍車をかけた。マリウス事件の時に一番非難されたのは、血統的に不要なら、なぜ子供を作らせたか、なぜ産ませたか、というところである。子供で客を釣って、子供でなくなったから殺したのだという非難は多かった。前述のシマウマもカワウソも、殺したか売り飛ばしたかの違いだけであって、状況は同じである。余談だが、動物園が動物の生死去就の発表を避けたがる理由もここにあるのかと、暗然たる思いで納得した人も多かろう。

井の頭はな子については、ゾウを単独飼育する事の非は井の頭も認めているが、現実に齢60を超えた老体を全く違う環境に移動させる事は、そうした訓練を施していないはな子には正しく別な拷問であって、実現する事を得ないのであるから(名前は忘れたが米国の活動家でそうした意見を表明した人もいる。タイのサンクチュアリに連れて行くなんぞは門外漢のタワゴトだ)、これは仕方がない。
釧路タイガ・ココア/のんほいマーラ/のいちミルキー は、確かに西洋であれば殺処分になったであろう。それを生かしたるは、ある種快挙である。但し、園長も担当もどんどん変わり、一貫した運営ポリシーの存在しない日本の公立動物園には、「一生面倒看る」基盤が無い(これは安楽死させない事と表裏一体という訳だ)。そういう意味ではある種暴挙とも言えるであろう。ココアは現状維持で終生飼養出来るだろうが、ミルキーは群れ入り出来ぬので結構厳しい。マーラは、どうなるのか想像もつかぬ(水量を減らし負荷をかけるトレーニングを早目にせねば早晩進退窮まると思うが、のんほいはどう考えているのであろう)。他にも、福山市ふくちゃんはEAZA園であれば殺処分だろう。米国は治療実績があるので(治癒したかどうかはともかく)、必ずしも殺処分とは限らぬかも知れぬ........まあ米国は土地が広いから。そう、実はこれが大きい。米国は広いので、血統的に不要でも、必ずしも殺す必要がない。
...........と色々事例を考えてみたが、しかし、こうした事例は突出したものであって、レベルとしての動物福祉で語るべきではない。突出した事例については、状況毎に個別対応が原則であり、それは西洋でも同じである。クヌートは、親が育てられないなら殺せという意見もあったが人工哺育した。

もうひとつ、成島氏の話で?であったのは(氏の話を聞いて?が乱舞するのは、実は今回が初めてではない。われと氏は感覚のどこかが決定的にずれているに違いない)、某西洋園のシロサイを安楽死させた事例で、西洋ではQOLを重んじて安楽死させるが、日本では力尽きるまで殺さない事が殆どであり(ここで前述の東洋思想が出て来るのだが)、また動物は相当ひどい状態でも平然としている事が多く、前日まで元気で当日ぱったり死んだりしているので、ヒトとは痛みに対する耐性か何かが相当違うのではないか、という発言であった。
これは端的に言って、平気な顔をしているから平気なのだという発言である。これには恐れ入った。
また、前日まで元気で当日ぱったり、というのは、日ごろの定期健診等のケアをしていないと宣言しているようなものだ。更に言えば、異状を見て取れる程日頃綿密に観察していません、という声明でもある。

全くまとまっておらぬし、今思い出していない?もまだ多数あると思われるが、とにかくこうした状況で、福祉を語るのは百年早い、とわれは思うたのである。余りに否定的発言なので、最後の講演----法学者の諸坂氏によるリスクマネジメントの話のみは、頷きつつ聞き入った事を記しておく。氏の講演は常に法的側面から要点を語るゆえ、毎度非常に勉強になる。


さて、こうして?????????????となりて非常にnegativeなる気分となりつつ考えたるは、

で、なんで国立動物園?

なのである。どこから考えても、この疑問に戻る。
動物園法を制定すべし、という主張にはわれも賛成である。英国法の如く、執行機関には抜き打ち立入検査権、営業停止命令権、閉園命令権があればベストである。少なくともそれで堀井の如き低レベル園は駆逐する事を得よう(残された動物どーすんの、という大問題はあるが、それもカバー出来る法である事が望ましい)。
だが、繁殖繁殖繁殖と声高に叫び、世界潮流に対応する役割を担わせるために国立動物園を置く、というアイデアは一体どうなのか。法整備をし、なるべく公立から脱する事で活路を見出した最近の地方園の成功例から考えると、全く時代を逆行する発想ではないのか。第一、米国も欧州も、国立園はそんな役目を負っちゃいない。そして骨抜きでない動物園法を制定されたら、多くの園では、逆に繁殖が難しくなるであろう。なにしろスペースもなければ、基礎的飼育技術のなっちゃいない飼育担当者も少なからずいるのであるから。

動物福祉を本気で考えるのであれば、求められるのは、骨抜きでない動物園法だ。
国立動物園、これはお上の威光を信ずるヒト以外には、意味がない。
大体、国内の固有種すら全く護れず、密輸で禁止動物大販売や象牙を放置している国である。そんな国に動物園を管理運営する能力はない。人材を見つけて来たとしても(考える会のメンバーがやるのを前提としているのであろうが)、無能な環境省や農水省の紐付きになっては、無駄に振り回されて終わるのがせいぜいである。骨抜きでない動物園法を制定し、法を厳格に運用する何年もの実績を経て初めて、こうした議論が可能になるのであろう。ああ、百歩譲っての話だ。個人的には、国立動物園は議論の余地なく不要と思うので。

全く整理されていないが、メモであるからここまでにしておく。



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