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4時50分の男 [同居猫]

当家に住まう仔猫ニャン太に猫棚を買い与えたるは既に述べたるが、ニャン太の、猫棚をいたく気に入れり。
猫棚の窓際に設置したれば、日々これに登りて監視怠りなし。界隈に住まう強者キジ白の度々裏庭を見回りに訪れたればなり。このキジ白、模様のニャン太に酷似したれば、夕刻等に外にて出会うと、毎度一瞬「脱走か!?」と思う程であって、当家に住まう全員の、一度は錯覚したる。無論野良にありしゆえ強面であって、室内にてのほほんと暮らす少年ニャン太とは、自ずと面構えの厳しさの違いたり。おまけにキジ白の堂々たる成体オスであるに対し、ニャン太は全くの小僧であって、ガタイの大きさからして異なりたり。ゆえにガラス窓をはさみて両者対峙したる折、格の違いは明らかであって、物置屋根上より睥睨したるキジ白に対し、猫棚の運悪く下段に位置し居りしニャン太の、硬直の一語であった。その状況たるや、兄が妻の表現を借りれば「ああっオレとおんなじ柄!しかもでかい!!」というものであって、本人(ヒトではないが)は硬直する程の緊張であるが、周囲のヒトは無情にも大爆笑なのであった。

ニャン太の朝は早い。
二階の起床時刻は午前5時である。なにゆえ斯くも早起きなのかわれの知るところではないが、ニャン太は通常兄が妻または兄の寝台上に眠る。そして実に正確に4時50分に、夫婦を起こすのである。目覚まし時計のセット時間の10分前に起こされるという最悪の状況が毎朝現出しておるという訳である。ニャン太は週に2~3度はわが室に泊まるのであるが、その際も、実に正確に4時50分に二階に上がり行きて起こすのであるという。げに怖ろしきことである。当初ニャン太の食事は朝夕6時と決まっており、最初は腹の減りて目の覚めたるかと思いし兄が妻は、眠き眼をこすりつつ、カラカラと朝餉を出しておったのであるが、ニャン太はこのタイミングにおいてはさして食するでもなく、ようやく食事を開始せしは二階在住ヒトが食事時である。思うに、己が目の醒めたるからには周囲を起こすは義務と心得ておるらしい。そは一階にも飛び火しており、ニャン太は実に正確に、5時50分にわが部屋を訪れ、われを起こし、窓のシャッターを開ける様要求するのである。ニャン太の要求は厳格であって、われが目を醒ますまで呼びかけ続け、終いにはわが頭部を叩く。文字通り、叩き起こすのである。われは寝台より這い出で(失敗し落下することもある)、窓に這い寄り、カーテンを引張り寄せ、シャッターの開ボタンを押し、寝床に這い戻る。わが起床時刻は7時40分であって、殊に週中の繁忙時には就寝時刻の午前2時半~3時にも及ぶわれとしては、5時50分の一時起床は真にキビシい。まあ、開ボタンを押しカーテンを開けたるのち2時間弱の所謂「二度寝」が可能であるから、二階よりはマシかも知れぬが、何しろキビシい。おまけにニャン太めは、われを文字通り叩き起こし部屋を明るくさせ、一頻り外部監視を終えたるのちは、猫棚に設置されたる丸椅子(通称「座椅子」)上にまるまりて、己れのみさっさと朝寝を決め込むのであった。

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☆朝寝。なにゆえ片足を抱えておるかはナゾである。

斯様にニャン太の日中をひとへに眠りて過ごしたり。夕刻となり、ヒトの続々帰宅すれば、まず二階にて食事ののち、わが帰宅と見るや階段を降り来たる。これはわれを慕いてと思わば大間違いであって、要するに、猫棚の設置されたるわが室は、ニャン太においては己が遊戯室なのであって、ニャン太にとりてはわれは遊戯室付きの下僕なり。従いて、玄関に駆け来たるは、ようやく帰り来たる下僕を遅しと叱責し、「遊ぶから相手してにゃ」との断固たる意志の表明なのである。われは、尾をぴんと立て、意気揚々とわが室に向かうニャン太の後に付きて歩く破目となっておる。帰宅し最初に行なうは手洗い・洗面であるが、その間ニャン太は、洗面台横の洗濯機上に鎮座し、下僕の雑用終了を待ちておる。それが証拠に、われが洗い終えたる顔・手を拭くや否や、「いざ」とばかりに洗濯機を飛び降り、「こっちにゃ」と振り返りつつわが室に向かうのである。われは着替えもそこそこに、お相手つかまつらねばならぬ。「貴殿の住まいは二階であるが」と言うたところで始まらぬ。とりあえず、猫棚に付属せし紐をけしかければ、猛然と遊ぶ。

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☆ばりばり

とにかくへとへとになる迄遊ばせねば、われは何も出来ぬ。なにしろすっかりと疲れてまだ紐に手を出しておるぐらいである。

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☆疲れても遊ぶ

その内夕食も腹内でこなれるか、ようよう眠りに就く。この間にわれは着替え、急ぎ夕食を摂るのである。

うたたね.JPG
☆うたた寝

が、わが食事中にニャン太は目醒め、またぞろ呼びに来る。拙宅の居間の扉はガラスが格子状に入っておるが、その向こうより盛んに鳴きて呼ばわるのである。声を聞きつけ兄が妻の、相手をしに降り来たる。われも食事もそこそこに、羽根の猫じゃらしを手に、付き従いて自室に戻る。ニャン太は羽根フェチである。ニャン太は猫であるから、御多分に漏れず猫じゃらしにて遊ぶのであるが、通常の猫じゃらしにはすぐに飽いたるものを、羽の猫じゃらしを用いれば、疲れを知らず上を下への大騒ぎである。この間兄が妻とわれは、入れ替わり立ち替わりお相手つかまつるのであって、腕は常に筋肉痛状態である。

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☆下段

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☆中段

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☆最上段

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☆カーテンレール

さて、ニャン太のカーテンレールよりエアコンに至りしは既に述べたるが、カーテンレールの細くして、方向転換の甚だ難し。試行錯誤の末、遂に会得したるが、後退である。


☆早い話がそのまま下がる


ニャン太は仔猫にて疲れを知らず、高校生一名を除き全員40代以上のヒト一家の、キビシかりけり...............。
 
 

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